TABOO

静まり返る教室の堅牢さと冷酷さを皆さんはご存知であろうか?
一様に押し黙る硬い表情の人の群れ、物言わぬコンクリートに包まれた重い空気。
それはまさしく牢獄のようであり、さながらジャンバル・ジャン(若者言葉ではありません)の気持ちを心外ながらも感じることができる、クロマティのように言うとすればアットホームでスペーシングな巨人軍バンザイな劇空間プロ野球なわけである。

さてそんな牢獄アットホームにいま、まさにこの瞬間にある重大かつ貧乏臭いようなそれでいてビバリーヒルズも真っ青(まっつぁお)な事件が起ころうとしていた。

「誰だ!金沢の机にシャンデリアを入れたのは!」
静寂を破り(ついでにふすまも破り)叫んだのは教師である。
しかしながら教師であって教師ではない。
なぜならば、彼はつい今朝も人を殺してきたばかりだからである。
教師ながらも殺人者。彼はこのジレンマに苛まれつつ、エコにも気を使う地球に優しく人には厳しいマーダー教師、それが私なのだ。いいえ、私ではありません。

教師の言葉に生徒全員の視線が金沢という焼いた後のベーコンにそっくりな生徒に注がれる。
あった。確かにあった。
白銀に光り輝く豪奢なシャンデリアが、金沢(焼いたベーコンにクリソツ)の机から大半をはみ出させて己を主張している。

金沢の貧相さに反するその豪華な200万円クラスの輝きに全員がため息を漏らし、果てには失禁をするものまで現れた。
その失禁男こそが、後の米国大統領であり、数々のエキセントリックな政策をシャンデリア片手に掲げた男であるが、それは今はまだ話すべきことではないのでやめておこう。

さて話を数時間前に戻そう。
時は正午、盛夏の日差しがまぶしい校庭である。
二人の男子生徒が何やら大きな団扇を持って騒いでいる。
ゆうに3メーターはあろうかというその団扇を振り回す二人はお互い初対面である。
「バカヤロウ!俺の団扇のほうがデカイ!」
「いいや、俺のほうが!」

どうやら二人は天狗であった。

さて話を戻そう。
教室ではシャンデアリアが俄然輝きを増し、生徒たちはそれに魅了されるかのように目を輝かせていた。
その一方で、校庭の天狗は鼻がグングン伸び、校長室の好調の頭は真珠の如く輝いていた。

この輝きのスパイラルに誰がついてこられようというものか。
輝き学園はこうして、100年間輝きを増し続けていった。
まるで、学園自体がシャンデリアのように。

〜稲川順二の怖い話 ビバリーヒルズっぽい高校白書〜 より抜粋

イヅチ「はいそれでは今週も花びら町タブー報告会をはじめたいと思います」

ヤドコロ「異議あり!」
ニシモロ「なし!」

イヅチ「はい、二人とも静かに。いい加減にしないと寝ている間にスラスラと英単語を言えるようにしますよ」

ヤドコロ「I,WELL」
ニシモロ「YOU,WELL」

イヅチ「では今週はオチジマさんから」
オチジマ「はい。昨日のことですが、イデオカさんが銭湯「ガムの湯」にて牛乳を一気飲みしているのを目撃しました」

イヅチ「はい、タブーですね」
イデオカ「え!?風呂上りに牛乳飲んでただけですよ」

イデオカ以外全員「タブーですね」

イデオカ「ガムの湯の牛乳はイヌベさんの重要な水分じゃないですか。はい、オチジマさん4タブー」
オチジマ「ありがたきタブりせ」
ヤドコロ「すごいですね、これで今月だけで40タブーじゃないですか」
ニシモロ「あと1タブーで41タブーですね」
オチジマ「うるせえな、ゆっくり骨折しろ」

イヅチ「これからは気をつけてくださいね、イデオカさん。同じ"イ"つながりとして」
イヌベ「ニャー!」
イデオカ「…はい、すいませんでした…でもただの猫ですよね、そのイヌベさんって」

イヅチ「えーと次はヤドコロさん」
ヤドコロ「一昨日、イデオカさんが首にタオルを巻いて神輿を担いでいるのを目撃しました」

イデオカ「はあ、お祭りですから。それに皆さんも担いでらっしゃいましたよね?」

イヅチ「話は変わりますが、タオルの銘柄は?」
ヤドコロ「ガムの湯謹製です」

イヅチ「はい、タブー」
イデ以外「タ、ブー」
イデオカ「ええー!」

イヅチ「そのタオルはイヌベさんの寝具です」
ヤドコロ「夏を乗り切るための」
ニシモロ「あの夏を乗り切るために必要な」

イデオカ「…すいません気がつきませんでした。でもイヌベさんてただの猫っていうか」

イヅチ「えーと、ヤドコロさんは1タブー」
ヤドコロ「ごっつあんです」
ニシモロ「おっと、相撲取り。もしくは角力気取りですか」
オチジマ「うるせえゆっくりマワシに巻かれろ」

イヅチ「さてニシモロさんはいないものとしまして、デオカさんの番ですが。もうイつながりとはしたくないデオカさん」

イデオカ「あの、ニシモロさんとオチジマさんがKKKの集会に出ているのを目撃しました」

イヅチ「はい、ノータブー」
デオカ以外「ノー&タブー」
イヌベ「ニャー」
イデオカ「そっすか」

イヅチ「ということで今週もイデオカさんゼロタブーということでもう少し頑張ってください。同じイつながりとして」
イヌベ「ニャー」