そもさん&せっぱさん

「また牛蒡だ!」
またか、と隣をみると、案の定、ケンスケがラッキーストライクのパッケージにぎっしり詰まったタバコサイズの牛蒡を引き抜いているところだった。
最近、健康のためとかなんとかいうことで、政府が新たに条例を作った。
”あなたの健康を考え10分の1の確立でタバコが牛蒡になっていることがあります”
ケンスケはパッケージにそう印刷されたラッキーストライクを忌々しそうに海に投げ捨てた。
防波堤に腰掛けていたヒロナリは、何かを思いついたようにピョンと飛び降りると、自分の(10分のいくつか内の正常な)ラッキーストライクを一瞥してから、ケンスケに「よお」と声をかけてから、放った。
見事なバックハンドキャッチでそれを掴むと、ケンスケは素早く一本抜き、まるで名画家がモデルに向かってするように、海へ向かってピンと立てた。
「まったくよお、なんだって政府はこんな面倒くさいことすんだよ?」
「さあな、牛蒡のほうが健康にいいからだろ」
「生だぜ?そんなもんどうすんだよ?」
「煮てあっても嫌だけどな」
ヒロナリは大きく伸びをして、頭上に広がる青空に目を細めた。
水平線の向こうの入道雲が”今日も暑くなるぞ”と言っている。
「まあ、一番の問題は、俺たちがまだ12歳だってことだ」
ここ十数年で、10代(それも前半)の若者の喫煙率は爆発的に増加していた。
政府の見解では、原因ははっきりしていないが、若者の社会に対する反発とアンチヒーロー症候群が云々、という結論に達していた。
その結果が「牛蒡」だなんて政府も俺たちとどっちもどっちの阿呆だ、とヒロナリは思っていた。
だったら、全面禁止にすればいい。

「なあ、泳ぐか」
そう言っているそばからケンスケはもうTシャツを脱ぎ捨て、ハーフパンツ一丁になっている。
「ああ、泳ぐか」
ヒロナリもシャツを脱ぐ。
潮風の匂いを嗅ぎながら、目の前に広がる青い海が永遠に存在しないことをヒロナリは確信した。
「来年はもう、ここにも来れないんだな」
いつの間にか隣に並んだケンスケが同じように海を見つめながら呟いた。
13歳になれば、ケンスケもヒロナリも実験体になるために県外の研究所へ行くことになっている。
それは海が永遠ではないことと同じように、彼らにとっては必然の事なのであった。
2人は去年の夏に担任の教師から、「そこは全てがコンピューターで制御された完全なドーム状のものだそうだ」ということを聞いていた。

「なあ、研究所にタバコ、あるかな!?」
突然駆け出したケンスケが振り返って叫ぶ。
「あるかもな、牛蒡じゃなくってホログラムかなんかでできたタバコが」
ケンスケを追い走り出しながら、ヒロナリも叫び返すとケンスケが大声で笑った。
「牛蒡のほうがまだましだな!」
二人はもつれ合うように、一気に海へ飛び込むと、沖へ向かって勢いよく泳ぎだした。
防波堤に置かれていたラッキーストライクの箱から、2本のタバコが転がり、風に押されて砂浜へポトリと落ちた。












昨日、ふと思リブル。サータアンダギーなのかそれともサーダアンタギーなのか?で、言い方を間違えたら呪われたりしたら嫌だ。腕のくるぶしがサータアンダギー(もしくはサーダアンタギー)になってしまう、とか。メガネと目の間に無理やりサータアンダギー(もしくはサーダアンタギー)を詰め込まれる、とか。夏と沖縄は果てしなく似合うけどそんな呪いはまっぴらごめんです。ではっ