立ち呑み居酒屋 ポールスタンレー

これはこれは、どうもご無沙汰様でございましたなぁ
ええ、、え、もう元気だけが取り柄でございますから、いっぺんも風邪なんかにはやられておりません。
はあ、そちらは随分と面が細くなりましたなあ。
流行の、ああ、随分と世間を賑わかした、あの。それは大変でございましたなあ。
いまはスッカリ?ああ、なら良かった。
へえ、島から出て何をしてたかって?
今ではこんな店を構えてはおりますが、ええ、もうそりゃあ話すも恥ずかしい事ばっかりでございました。
ええ、アタシもスッカリ歳を取りましたから、娘の所へ転がり込もうにも厄介になるだけですから、流離ってるっていえば聞こえはいいんですが、所謂、襤褸ひとつでフラフラの根無し草をしておりました。
その節は、お宅様にもいろいろとご迷惑をおかけしまして…
そんな、大した事じゃございません。日本中をさ迷うのもなかなかどうしていいモンでした。
ところでこんな所でまたお会いできたのも何かの縁でございましょうからひとつ奇妙な話でも。
いえいえ、そんなちっとも頭をお下げになる必要なんてありはしないんです。あの時はアタシも酔狂でしたから、はっはっは。
あれは丁度アタシがヤケッパチになって島を出て数週間、本当に野垂れ死にするしかないって頃のことです。
あるキタの方で、田舎だったって事しか覚えちゃいないですがね、そりゃあ本当に島なんかよりよっぽど何にもないトコだったんです。
ボタリボタリと野路を歩くアタシの頭にチラホラと雪なんかが降り始めまして、いよいよこれは死んじまうにはおあつらえ向きだなあななんて呑気に考えておりました。
ひとってのは本当に命が尽きる頃合には、どんな事も平気になっちまうんですね。
ああ、もう目の先には極楽か、はたまた地獄かわかりませんが、白い光まで見えてくる始末でした。
気が付くともう何を思うでもなくその光に向かって歩いておりました。
そうして、目の前までくると、それが今際の幻覚でもなんでもなくって、現実の光だったんです。
ショボショボと目を凝らしてみましたらそれはどうやら店の看板だと判りました。
ボヤァっとまるで後光のように光るそれには、”ホステス寿司”と毛筆のような達筆な字でもって書いてありました。
”はて?これはやっぱり白昼夢かなにかなのかしらん?”とボゥっと突っ立っておりましたら、ケバケバしい洋風のドアーがやにわに開き、これまた毒蛾のようなケバケバしい服をきた女が訝しげな顔でアタシを睨み付け、こう言い放ったんです。
「あんた、客かい?」
アタシがビックリしちまって何も言えないで居ると、女は長いキセルのようなものを吹かしながら、アタシのことを上から下までねめつけるように眺めだしました。
そうこうしているうちに、様子を見に来たのかもう一匹、毒蛾がヒョッコリ顔を出すんです。
「あら、お兄さん、寄ってかない?」
毒蛾2は、ニンマリと嫌ぁな顔で笑って言いました。
こうなったらもうどうにでもなれっってもんです。毒蛾だろうが、極楽蝶だろうが、どうせ死ぬんならとことん拝んでやろうと思いまして、アタシは毒蛾1を押しのけて店の中へドンドン入り込みました。
入ってみると、中はとんでも無いことになっておりました。スッカリあたしは新手のキャバレーかなんかだろうと思っていたもんですから、それとは裏腹の、小奇麗な日本料理屋といった様相に肝を潰しました。
右手には白木のカウンターがあり、左手には狭いながらもチンとした座敷があり、畳みの良い匂いがプンといたしました。
アタシがグズグズとまごついているとさっきの毒蛾2がカウンターの奥に入り込みまして、鉢巻をグイッと締めだして「なに握りましょ!」などと大声を張り上げるものですから、更にドギマギして、とりあえず、カウンターに並べられた椅子のひとつにドスンと半ば倒れるように座り込んだんです。
するとすぐに目の前に暖かいお絞りが出され、もう一匹の毒蛾が、愛想良くアタシを見下ろしておるのでした。
少しするとアタシも落ち着いてきまして、「確かに可笑しな店ではありましたが、もしかしたらこういった類のものがここでは流行っているのかもしれない」と思うようになっていました。
「じゃあ、ヒラメ…を」
そうなると、アタシも都合のいいもんで、丁度良く忘れていた空腹のことを思い出しまして一番の好物を注文しました。
すると、カウンターの毒大将は、威勢の良いながらも甘ったるい声で「ヒラメ入りまぁ〜す!」と誰も居ない奥へ向かって叫ぶもんですから、またしてもアタシはすっかり縮みこんでしまいました。
そうしてるうちに、毒蛾がドンドンと酒を勧めてきまして、やけっぱちのアタシは味もわからず、目を白黒させながら乾かしていったんです。
それから先はアタシも良く覚えちゃあいないんですが、時折、「ポッキー握りお待ちッ!」とか「王様マグロゲーム開始〜」などという声をグルングルン回る頭の中で聞いたように思います。
翌朝、凍りつくような寒さで目を覚ましました。
アタシの身体は何一つつけておらず、素っ裸の状態で雪の中丸くなっておりました。
昨日店のあった場所には雪でこんもり盛り上がった小山があるだけで、他は一面雪で真っ白でございました。
無意識のうちにアタシは、フラフラと小山に近づき、そこを掘っていました。
もしかしたらあれはやっぱり夢だったんだろうか、とはどうしても思えなかったのです。
しばらく掘り進むと、何か硬いものが指先に当たるのを感じて、そいつをエイヤッと道端へ放り投げました。
ドッサと落ちたその先には「ドッキリ大成功!」と書かれた、持ち手のついた薄っぺらい看板がありました。

その看板を見つめながら、世の中にはこんな暖かい騙しがあるのだ、まだまだ捨てたもんじゃない…
こうしてアタシは一生、ブラブラと旅を続けようと決心したんです。そもっとたくさんの騙しを受けてやろう、と。そしていつかは騙し返してやろう、と。
おや、もうこんな時間になっちまいましたね。ついついアタシも熱くなっちまって…面目ないことです。
ところでシメにひとついかがです?ポッキーのいいやつが入ってるんですよ。


ジーク・ジオン!ジーク・もぐら!

こんばんはドロレスクレイボーン(無口)です。
さて、芥川賞、直木(ナヲキー)賞ともに女性が受賞したようですね。
芥川賞のほうのなんか謎の言語を操るほうの女性はどうでもいいんですが、もう一方の桜庭一樹さんはもしかして、そのペンネームから察するにファイプロ版での桜庭和志(リネーム前)に影響を!?
とか思ったんですが、調べてみたらファイプロのほうは柏田 一樹であり全く似ても似つかないのでありました。

なので以上を持ちましてまったくどっちも興味はありません。
そういえば、思い返してみると芥川賞直木賞受賞作もどっちもあんまり読んだ事がありません。
だって角川ホラー文庫みたいじゃねーんだもん!(木にぶら下がったバナナを角川ホラー文庫を積み上げて取ろうとしながら)


ではっ