東海はシナ海ではありません

そうさなあ、あれはもう2日も前のことになるっけねえ。

オババの登場である。
このオババ、カラーリングこそモダン系であるが、全身から匂いたつそれは完全にアヴァンギャルドなセンセーショナルオールドウーマンである。
ここはパリ。
否、花の都、渥美清が夜な夜な現れると噂の浅草である。
時は正午。
オババの孫の名はイサム。
一見関係のないこの人間関係であるが、実は秘密がある。
秘密といっても、いやここで話すべきことではないので先に進もう。

時は金なり、トキは鳥なり。
そう叫んでたこ焼き屋の屋台に突っ込んで行ったのがオババの孫のおじいさん。
所謂、オババの旦那であるが、彼はその後、こんなことを叫んで畳の上で没した。
浜田省吾のジャンルは一体なんだったんだ?」
奇しくも正午と省吾。
オジジの亡くなったのも正午であって、ちょうど2日前。

しかしオババの言いたいことはそんなことじゃないのはわかりきっている。
少なくともオジジが死んだのはたこ焼き屋のせいではない。

オババはこう言いたかったのだと思う。
それは、あー、えーと。
ん?
忘れた。

浅草寺の朱塗りの大時計が正午を指していた。
ちなみに浅草寺には時計は、無い。

こうして今日もまた私はオババにたこ焼きを奢る。
オババはふん!と難しい顔でたこ焼きを頬張り、安酒で泥酔するのである。
そして今日も2日前のことはソースのように真っ黒な闇に包まれわからずじまいなのである。