ホイセー

あるところに悪魔に憑りつかれた男がいる。

さらにあるところ、そこから何万キロも離れた場所に歌手のリンドバーグに取りつかれた男がいる。
彼らは人種が違い、肌の色が違い、崇拝する神が違う。
悪魔に憑りつかれた男は40代後半で(悪魔と契約を交わすことなく)キャッサバ栽培で財を成した人物である。
また、リンドバーグにとりつかれた男は、キャッサバをボサノバと勘違いし、「それでもリンドバーグにはかなわない」とのたまうことで財を成した男である。

こうも違う二人の男だが、実は奇妙な接点がある。

彼らはウォッシュレットを使わない。
悪魔の男いわく「水は穢れを流すとともに運ぶ」
リンドバーグの男いわく「あの音のせいで、リンドバーグの曲(今すぐkiss.me)が聞こえなくなる」

だが、我慢ができずに華厳の滝で排泄を行ったことがある。
悪魔の男は観光先で、リンドバーグの男はリンドバーグのコンサート会場を間違えて。

悪魔憑依男は(悪魔の命によって)大を、リンドバーグは(渡瀬マキの歌を口ずさみつつ)小という違いではあるが。
こんな接点のある二人だが、彼らが出会うことはこの先、まず無い。
あるわけが、無い。