トクホン

「おーい」
と後ろから声をかけたら、それが友人ではなく巨大岩だった時。

「ちょっと醤油とって」
と渡されたのが戦死した兄の写真だった時。

ブルーズの流れる縁側で祖父が話してくれた「おったまげた話」

「一番怖いものはなに?」
「ボウフラ」

祖父はそう呟くと、戦死した兄の写真をみつめた。
「聖者になんかなれないよ」
思いつめた顔で続ける祖父に
「だけど生きてるほうが素晴らしい」
極が引き取ると祖父は少しだけ笑った。
祖父と僕を乗せてブルーズは加速していく。