旅の途中4

「あのフレディが死んだ」
うつむいてテーブルの上のパスタと挌闘してたGが、まるで「ちょっとコークでも買いに行ってくるよ」という風に
そんな事を言い出したから俺は少しだけビックリした。

Gの手元にあるのは冷えかけたパスタだったが、その言葉のせいだかなんだか知らないがガキの頃に日曜学校でみた神父が配るビスケットみたいにみえた。
ヴードゥー野郎はなんていってる?」
俺はシナモントーストをやっぱりGと同じように弄びながら"本当はだいぶ動揺してたが"さして興味もなく訊いた。

"時刻は午前6時。26日月曜日 今日のオハイオは晴天"
俺たち2人の1年前からの溜まり場である"軽食とコーヒーの店"グーグーズの店内を流れるラジオDJが陽気に伝える。
こんな平日の朝っぱらだというのにグーグーズの店内は「宣教師の格好をしたヒゲのユダヤ人」だとか
お喋りに花を咲かせる今風の若者なんかでわりと賑わっていた。

「"裁き"だってさ。フレディは裁きに触れる事をしでかしたんだそうだ」

「"あの"フレディがか?だったらヴードゥー野郎は毎朝目覚ましが鳴るたんびに裁きを受けなきゃならんな」

"茶化すなよ"Gは脂っこくなったパスタを絡めたフォークで俺を指すと視線を送ってきた。
ヴードゥ野郎ことレジー・オバサンジョについては俺も少なからず認めなければいけないところがある。
奴の働くアフリカ人の経営する薬局には呪いモノの像やら猛獣のペニスなんかを取り扱っていて、いっつもよくわからないお香の匂いで充満していた。
G曰く、奴はシャーマンなんだそうだ。しかもアフリカで代々続くような。
フレディが言うには「奴はどんな所にいようとも"例え便所でも"自分の噂を聞くことができる」
のだと断言していた。
もちろんそんな事は信じちゃいないが。
俺が奴を嫌うのはいろいろある。
奴の何か物知り訳知り顔の口調といい、漆黒の肌に汗一つかかずにトマトスープを飲み干すところといいまるで"ヴードゥ"じゃないか。
それに奴にはどうしてこうしてこのグーグーズの明るい店内は似合わない。
黒ヒョウにお菓子の城が似合わないように、だ。
つまりは俺はレジーの事が怖いからそんな呼び方をするわけで、レジーはそれを良く知っている。
認めたくは無いがな。

そしてGはレジーを尊敬していてフレディは最愛のアリスをものにすることなく死んだ。

こんな週の始まりがあるだなんて誰が予想したんだ?
俺はいつものようにシナモントーストを頼み、Gは珍しくパスタを注文した。
そして熱いコーヒーが運ばれてきてく「週末は何をして過ごしたのか?」とくだらない話題に終始しておさらばするはずだった。

少なくとも俺はシナモントーストを残すだなんて思いもしなかった。


ドリアンアイス。香りは生ごみに非常に近ライクですが、タマネギアイスだと思えばわりと食えます。四人で罰ゲームのように回し食い。

ということで、霧島で自炊泊と温泉を満喫したあとは、神社へと。観光らしくなってきました。

温泉は最初、「誰か大量のゆで卵でも作ってるんじゃねーかな?」というような香りが車で山道を上がっていくごとに強くなっていき"うで卵大好きクラブ"の僕としては嬉しい限りだったのですが、どうやら温泉特有の硫黄の匂いだったようです。
ナビゲーターと二人で「くっせー!」を連発しつつ入山。
温泉に入った後はうで卵臭が一週間くらい取れませんでしたが、わりと本望だったことはいうまでもありません。

霧島神宮にある謎の土俵

何故か広場の真ん中に鎮座する土俵。
木々の間から光が差し神々しささえ感じます。
その土俵で相撲を取ろうとしたけども、「おめーそれジャーマンスープレックスじゃねえかよ」と神様に怒られる気がしたので断念。

少し歩くと鳥居と石段がありました。
朝の空気が神聖度を5倍増し(当社比)。ジャージの僕らを圧倒するとかしないとか。

厳かに石段を降りてきた神官たち

たぶん結婚式とかだろうなぁ、とか思いつつ、グングンと接近してくる神官に思わず道をあけ、畏怖の表情でみつめます。

神官たち「おつかれさまーっした」

神官たち、体育会系のノリ。
そのギャップに大笑いしながら境内へ。

鳥居をレゴブロックと勘違いするバカ

次回へ続く