桃源郷1

かくいう自分も変なモノやなんかを見なかったわけでは無い。
といっても、幼少の頃から現実と空想の区別も出来ていなかったから(割と今もそうだが)それが実際、本当にあったことかどうかはわからないけれども。

白昼夢という言葉を知ったのはソノ頃の事だ。

私が9つになるまで、千葉にある実家の裏には小さな森があった。
森といっても面積にして25メートルプール3つ分くらいの小さなものであったが、それでもしっかりと"昼なお薄暗い"のだから一応は森だということにしておいても良いと思う。

その小さな森を近所の人は「蛇森」と呼んでいた。

なんともおどろどろしげな名前だが、夏に森の中に入ると、必ず鎌首をもたげたヤツやグネグネ這っているヤツに遭遇することから自然にそういう呼び名になったのだろう。

そして夏になると我が家を囲うコンクリの壁には、必ず蛇が大小問わず張り付いていた。